第10回グランプリ 特選 入選 総 評   


第8回四季の那須フォトコンテスト入賞作品発表

 第10回四季の那須フォトコンテストに県内外から、たくさんのご応募ありがとうございました。 応募点数380点、応募者数125名の中から入賞された作品をここに発表いたします。

主 催 : 四季の那須フォトコンテスト実行委員会(那須町商工会・(社)那須観光協会) 
後 援 : 那須町・那須町文化協会・那須フィルムコミッション・那須レジャー施設協会
NHK宇都宮放送局・(株)とちぎテレビ・(株)エフエム栃木・(株)下野新聞社
協 賛 : サッポロビール(株)那須工場・(株)南ヶ丘牧場・Mt.ジーンズ那須・(株)黒羽ニコン
東洋リビング(株)・富士フイルム梶E(株)フジカラープロフォトセンター




※写真をクリックすると大きい画像が御覧いただけます(別窓が開きます)。






遊行柳

 松尾芭蕉で有名な「遊行柳」。私の地元那須芦野で、織りなす四季の風景に揺られながら静かに地域を見守ってきました。特に早春の柳と桜の風景が素晴らしい。朝靄の中に浮かびあがる柔らかな息吹を撮影した一枚です。
(伊藤)


 遊行柳を題材にした作品です。此処は那須町でも史跡の代表格といった場所だと思いますから、「遊行柳」をモチーフにした作品は過去にも多くの作品が応募されたことと推察いたします。しかし、本作品ほどの傑作はおそらくなかったでしょう。霧が漂う早朝の時間帯に撮影出来たのは作者の努力の賜物でしょう。桜と芽吹きだした柳で画面全体を埋め、無駄のない構図を描きました。この作品を見ていると、遊行柳にまつわる伝説を素因とする幽玄能「遊行柳」の世界へ引き込まれてゆくように感じます。さらに的確なプリントの良さが作品の質を高めました。マット調の紙にプリントした色調が映像にマッチして奥ゆき感を与え、モチーフとなった遊行柳の謂れを一枚の写真の中に凝縮させているのです。撮影テーマが際立っていることに加え、構図の完成度が高く、プリントの色調も的確で完成度の高い作品です。
(選評:石橋睦美)

「遊行柳」 
伊藤正一(那須町)
撮影場所:芦野





九尾太鼓   
 那須は自分にとって好きな場所が沢山あります。いつもカメラを片手にしてわくわくして出掛けます。今回も毎年行っている御神火祭にて太鼓の音色に神秘性を感じて夢中でシャッターを切った一枚です。
(野川)

 那須町の殺生石に「九尾の狐」伝説があります。それに由来する祭りが5月におこなわれます。かがり火を焚いて狐の面を付けた宴者が太鼓を叩く。私はこの祭りを目にしたことはないのですが、多くのカメラマンが九尾太鼓をモチーフとした作品を応募してきます。昨年も今年も見た被写体ですが、本作品の映像は強烈でした。かがり火の近くで、激しく太鼓を叩く人々の躍動感が映像から伝わってくるのです。そして何よりもこの作品が優れているのは、画面上で主役を成す二人の宴者の体型の良さです。少し斜めに傾ぎながらバチを振る姿から祭りの高揚感と熱気、そして太鼓の響きが聞こえてくるようです。このような印象を与えるのは構図の完成度によります。かがり火を画面の端にさりげなく置いたことで、その場の雰囲気を画面に封じ込めました。加えて完璧なシャッターチャンスにより、作品の成功に繋がりました。
(選評:石橋睦美)

「九尾太鼓」」
野川健一(宇都宮市)
撮影場所:殺生石




 桜越しに見る那須連山だけでも好きな景色ですが、田んぼの中のトラクターが目に留まり、さらに良いアクセントになると思って写真の真ん中に収められる場所を探して撮りました。
(野沢)

 この作品を拝見してまず感じたことは、那須野に訪れた春ののどけさでした。桜が咲き、農作業に使う農機が水田の広がりの中にポツンと置かれていて、遠くに残雪の那須連山が望まれる。桜と水田と山並み、この3つの要素が画面の中で違和感なく調和して、那須野の春の風情を醸し出す映像を描き出しました。作者は、想像するに水田に置かれた農機に心ひかれたのだと思われます。それが、この作品を成功に導いた最大の要因です。もし農機がなかったら構図上でのポイントが失われ、作品の価値は半減してしまったでしょう。水田に置かれた農機によって画面が引き締まり、春の空気感が画面に投影されたのです。同時に作者の作画意図[撮影テーマ]が的確に表現されたのです。力強さは感じられぬ映像ですが、画面から匂い立つ春の風情を感じさせることにおいては、今年度随一の作品です。
(選評:石橋睦美)
春麗(はるうらら)
「春麗(はるうらら)」
野沢栄(真岡市)
撮影場所:芦野御殿山




天空へ  茶臼岳牛ヶ首へ向かう峰で素晴らしい雲の湧く場面に出会い、孫を連れた御夫婦と会い、後方から撮影することを了解を得て、牛ヶ首少し手前で人物が空に吸い込まれていくように広角レンズでアングルを決めて撮りました。
(江川)

 那須岳を被写体にした写真は、昨年に続いて応募数が多いと感じました。そんな中で、最も目を惹いたのがこの作品です。何よりも良いのは人物の配置と、上空に広がる巻雲の美しさです。その巻雲を背景に人物が配置され、山の雄大さが表現されました。そして岩礫の稜線に生える草が秋色に染まり、季節感を匂い立たせます。この作者の作画意図は、おそらく山の雄大さを表現しようと試みたのだと思います。そこから撮影テーマを組み立てるための要素となる澄んだ秋空にたなびく巻雲と、登山者を配する構図を組み立てた。後は登山者がベストの位置になる瞬間にシャッターを切ったのでしょう。私は作者の計算され尽くした画面構成を高く評価します。山岳写真と言うと迫力重視の傾向にありますが、この作品のように季節感と雄大さ合わせ持つ作品の素晴らしさを認識すべきでしょう。
(選評:石橋睦美)
「天空へ」
江川清(宇都宮市)
撮影場所:牛ヶ首付近




 自転車イベント「那須高原ロングライド」にて大谷開拓で休息する選手達のワンシーン。あの濃霧の中、山間の登り坂、下り坂と高低差のあるコースを颯爽と走る姿に感激しました。
(大森)

 那須町は自転車のロードレースが盛んなようです。その様子を題材にした作品の応募を昨年も拝見した記憶があります。ただこの作品の優秀なのは、作者の視点の柔軟さです。ロードレース大会の休息地点での情景を、実に見事な構図で描き出したのです。画面構成は横に倒された自転車の群れを主軸としています。画面の8割を自転車で占め、遠くにレーサーたちの動きを写し込んでいます。単純な構図なのですがカメラのセット位置がよく、霧雨に包まれた休息場の空気感が画面から伝わってくるのです。私はこの作品を見ていると、なぜかロートレックのポスターを思い浮かべてしまうのです。それは背景となっている人物の動きの面白さからなのですが、無意識に置かれた自転車と相俟って、その場の臨場感が画面から漂い出てくるのです。作者のカメラアイの鋭敏さが反映された作品です。
(選評:石橋睦美)
大谷休息
「大谷休息」
大森鐵治(那須塩原市)
撮影場所:Mt.ジーンズ那須 駐車場




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