第10回グランプリ 特選 入選 総 評   


 

 昨年に引き続きフォトコンテストの審査を担当させていただきました。その印象を記します。今年は昨年より応募者数が減って、応募作品も少なくなってしまいました。この結果は残念なのですが、今年の応募作品の質は昨年に比べ,だいぶ向上していると感じました。入賞作品をご覧になってもらえば分かると思いますが、作者の個性が色濃く反映された作品が多く見られたのです。一例を上げれば、昨年の応募作品で目立っていたのは、過去に入賞した作品と同じ場所にカメラを据え、似た構図で撮影した映像が多く見受けられたことです。確かにそのような場所は被写体として格好の場所だから類似する映像が多くなるのは分かるのですが、今年はその傾向が薄れ同じ場所であっても全く違った目線で被写体と向き合った映像が多くなったと思えたのです。私としては、この傾向は歓迎すべきことだと思うのですが、ただ質の高い作品が要求されるフォトコンテストと言うイメージが定着してしまうと、投稿する方々が出品をひかえてしまうことに繋がるようにも思えるのです。

 次に応募作品を拝見して感じたことを述べておきます。今年はプリントに気を配った作品が多くなって、応募に対する気構えが真摯になったようです。これはとても良い傾向だと思います。自分の作品をより良く見せるには、写真を発表する上での最終段階であるプリントに気を配ることは、カメラマンにとって最も大切なことだからです。プリントの仕上がりが良ければ作品価値は数段上がるのです。逆にプリントを疎かにした場合は、どんなに完成度の高い構図であっても評価に繋がらないことが多々あります。今年も一部、そのような応募作品がありましたが、折角応募しても第一審査の段階でセレクトから外れてしまいました。このようなことは、那須フォトコンテストに限らず、すべてのフォトコンテストに通じることですので、応募する方々はプリントの色彩感覚を養うことの重要性を認識すべきです。長くなりました。以上で今年のフォトコンテストの総評といたします。

 

審査員 写真家 石橋 睦美


<写真家 石橋睦美>

 
1975年頃から東北の自然に魅せられ本格的に撮影を始める。山岳写真を経て日本の森林、そして日本の原風景をテーマとして撮影を続けている。

 
著書に『森林美』『森林日本』『神々の杜』『日本の森』『熊野-神々の大地』『ブナ林からの贈りもの』『みちのくの名前』『鳥海・月山』『歴史原風景』などがある。千葉県在住。






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