私が審査を承って最初の年ですから応募された作品を拝見するまで、那須町フォトコンテストのレベルの程度が分かりませんでした。そこで第一次審査では、応募者のすべてから最低一点を残すことにしました。そうしないとセレクトされる写真が少なくなり過ぎはしないか、と不安を抱いたからです。しかし応募作品を見てゆくごとに、那須町フォトコンテストのレベルが、想像していた以上に高いとことを実感させられたのです。そのような経緯から、第二次審査では私の作品判断基準を遠慮なく適応させてもらい作品選定をおこなうことにしました。
私は作品の善し悪しを決める最小限のことを定めています。どんなに構図が優れていてもピントが悪い映像、カメラぶれの映像、プリント色調の劣悪な作品はすべて外すことにしています。少なくてもこの三つの要素をクリアした作品を選び出した後に、作者の目線の鋭さ、被写体に対する思い入れの強さが映像に反映されている作品を残してゆく。そういう作業を行うことで、優秀作品の数が厳選されてゆくのです。
最終審査に残った作品は、そう多くはありません。厳選された作品の中から最優秀賞、町長賞、商工会長賞・観光協会長賞と、それに列する甲乙付けがたい優秀作品賞を決定するのにそれほど時間はかかりません。厳選された作品を横一列に並べれば、際立った作品が自ずから浮かび上がって来るのです。このようにして、今回の審査では作品の順序を決定致しました。つぎに優秀賞以下の作品を見並べて、準優秀賞と入選を区別して審査を終えました。
審査過程において、ひとつ申し上げておきたいことがあります。同じ被写体、または類似したモチーフの優秀作品が競合した場合は、それらを見比べて私の琴線を最も揺り動かした作品を上位に上げることに致しました。たとえば「千体地蔵」や「祭りの舞」をモチーフにした作品です。こうして選び出された最優秀賞から優秀賞へ至る作品のレベルは、かなり高いと感じております。受賞者の方々を始め、今年の優秀作品を参考にして自分独自の映像世界を想像し、来期の作品制作の一助にしてくれればと思っております。もうひとつ付け加えておきます。受賞作品のタイトルがどれも実にシンプルで素晴らしいことです。この頃では、自分の作画意図からかけ離れた無味無感想なタイトルが多く目立ちます。そのようなタイトルをつけるのは、被写体に対する作者の思い入れが欠如していることの証明でもあるのです。撮影テーマは大切な作品表現の一部と考えてください。その意識をしっかり持っていれば、タイトルを通して自分の撮影意図を伝えられるのです。以上をもって私の審査の経緯をお知らせ致しました。これを総評とさせていただきます。
審査員 写真家 石橋 睦美 |